あくまでも観客席から

アイドルにかじりついた記録を残したい人のブログ。

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HKT48の #劇はじ からもらった熱意

HKT48がこの数か月取り組んでいたリモート劇プロジェクトHKT48、劇団はじめます。」の2作品を観た。

 

HKT48が出演だけでなく、企画・脚本・演出・美術・音響などの制作業務も含めてメンバーが取り組むというプロジェクトだ。企画が発表されたのはもう昨年の秋ごろだったと思う。

 

HKT48劇団ノーミーツとコラボレーションする意義を含めた今回の企画の背景については、『リアルサウンド』に寄稿している香月孝史さんの記事が明るい。

realsound.jp

 

発表のときは正直、興味がそこまで湧いてきていなかったのが本音ではある。この頃には興行が形を変えつつも再開していた。Zoomをはじめとしたリモートでの打ち合わせ自体は自分の中で日常化しつつあるものの、復活したリアル興行の面白さには敵わないと思っていた。

 

とりあえず最終日の公演だけ買っておけばいいと思っていたのがチケット販売開始当初だった。ところが最終的には初日から7公演も観てしまっている。

 


『水色アルタイル』

チーム"ミュン密"『水色アルタイル』は、ステージ上でも配信でも、とにかくお客さんに楽しんでもらいたいサービス精神が強い演出の田島芽瑠さんの意志が作風にも出ていたと思う。「仲間を集めて集大成に向かって進んでいく」という、『ウォーターボーイズ』的な王道の青春群像劇の中で、主役の石橋颯さんを筆頭にもともとのメンバーとしての個性が活かされていた。

 

上述の田島さんもはじめ、視聴客のほとんどがHKT48のオタクであることをメンバーがよく理解していたんだと思う。ありがちなバストアップの画面のカットを減らしたり、毎公演変更している小さな要素を入れ込んだり(アフタートークなどを観ていると、美術の本村碧唯さんのホスピタリティが素晴らしい!)。クライマックスはメンバーが学園のアイドルになってのステージシーン。Zoomもしくは演劇自体になじみがなくても観ていて退屈になりにくく、「歌って踊るHKT48を観た」という気分にもなれる。とても楽しみやすいアイドル劇だった。

 

不本意アンロック』

チーム"ごりらぐみ"不本意アンロック』は、対照的にSF要素を盛り込んで話の筋を考えさせる脚本だった。オタク気質が強い豊永阿紀さんの色がよく出ていたと思う。80分のあらゆる場面の中に「回収可能」な大小の要素がこれでもかと散りばめられている。

 

今回は2作品ともにLINEのオープンチャットが用意されていて、そこではネタバレOKで感想が飛び交っていたのだが、よりトークが盛り上がっていたのは『不本意アンロック』のほうだった。「後ろに映りこんでいたあの写真、最後のシーンのこのセリフにつながっているのでは?」「届いたハガキの住所は何を意味するのか?」など考察が飛び交っている。終演から2日経った今でもLINEが動き続いている。視聴するHKT48オタクの「オタク気質」に入り込むのがこの作品だということだ。(加えて、エンディングの坂本愛玲菜さんの歌声が聴けることは強く付記しておきます!!)

 


作風に違いはあっても共通するのは

……とまあ、ここまで2作品の作風について書いてきたけれども、大事なのはその中身以上に、この制作を企画段階からメンバーが熱意を持って推進してくれたことだ。"ミュン密"のほうは当初の脚本が"ごりらぐみ"とテーマが重なっているのもあって、いったんボツになって最初から書き直したりもして大変だったらしい。与えられたものを出すだけではなく、作り出していく姿勢が表れているエピソードだと思う。

 

最近の48グループには、こんな機会が減っていたように思うのだ。AKBができて15年経って膨大な楽曲と衣装のアーカイブ。今いるオタクは何年も観続けてくれているリピーター。昔人気だったあの曲を並べておけば喜ばれる。むしろ冒険して何かやるほうが反応が悪い。「東京ドームで国内全チームの新公演初日を発表」がほぼ実現されていない事件が日常になって久しい(もう8年近くも前だ)世界で、もはやあきらめていた部分も僕にはあった。それで楽しいんだから、いいじゃないかと。

 

そんな風に思っていた僕を殴ってやりたい。推している子たちには、新しい作品を・風景を見せてくれるエネルギーがまだまだあふれている。それを引き出す場(というか市場とでもいうべきか)を出せなかった僕たちにも責任の一端はあったのだと思う。大反省だ。

 

本番を控えて広報や公式の動画(ドキュメンタリーはおすすめかも)からあらゆる取り組みへの熱意がより見えてくるようになると、初日公演を買うようになり。初日を観てその姿勢と制作結果に驚き、日を空けた3日後の公演ではより進化していたことに感動し、千秋楽のカーテンコールでは僕もメンバーとともに涙目。結果的に7公演観た。パンフレットも合わせて結果的にリモート劇に数万円使っている自分にびっくりである。

 

思えば、これだけ千秋楽に"ちゃんと"感動したのも久しぶりかもしれない。長く続いていく演目はそれはそれで尊いのだけれども、最後まで走り抜ける千秋楽の感覚を味わえなくなってしまっていることに気づかされた。

 

 

「ポスト指原」へのヒントはここにあった?

さっそく田島芽瑠さんを中心に自主的に次の企画に取り掛かろうとしているメンバーもいるらしい。新しい劇もぜひ観たいし、この情熱がリモート劇以外にも発露されることも僕は期待したい。一昨年までプレーイングプロデューサー的にふるまっていた指原莉乃さんがいなくなってもがいていたことのへの脱出点、実はここにあるのかもしれない。今回の劇はじでの姿を見せられたら、どんなクリエイティブをひねり出してくるのか、新しいHKT48が楽しみで仕方がない…!

 

おまけ

2作品に感動しつつ、「リモート演劇」は今後も続くものなのだろうかとことはまた別に考えていたところでもある。画質や音質の問題。画質や音質含めて機材が整ったときに「生ドラマ」は成り立つのか、などなど。未来への課題もこの形態にはたくさんあるよなあと思っている……けれども、その話はNEX ZEROチャンネルで3/6(土)に行われるいときんナイト オンライン」でぜひ呑みながら「リモート」で交わしましょう(笑)。

live2.nicovideo.jp