まえがき
48グループの各劇場がコロナ禍で最初に閉鎖したのが2020年2月の終わり。あれから2年も経った。現場は戻ってきつつも、コールはできなくなって久しい。MIXの打ち方なんかは身体が忘れてそうで怖い。「もうヲタ卒した!」という知人の声は複数聞くし、「だいぶヲタクが減ったな」と感じる現場もある。逆に「ここは盛況なんだ!」と驚くこともあり。コロナ以後のヲタクの動きについてはだいぶ濃淡があるんじゃないかと思うことが増えた。
「ヲタク、生きてる…?」
この疑問を公開されている数字でどうにか見れないかと思い始めた。
観測範囲
数値化しやすいWeb上のもの、たとえばYouTubeやTwitterなどの数字は直接お金を落とすヲタ活とはまた別になるので、もう少し踏み込んだ数字がいい。一方で有料配信は統一された数値の取得が難しいし、ライブ動員は定員外の応募者の観測が外部からできない。となると、やはりCDの売上が一番とっつきやすいものになる。
集計機関については歴史が長いオリコンの数値を採用することにした。ビルボード集計数値のほうが特典付きCDの減算がないので実数には近いものの、推移を見たいので問題ないこととした。
それしかないのかよ、と思いつつも、オリコンが長年やってきた販売集計は、比較が難しい日本のこのジャンルの比較観測には価値があるのである。
拾う数値は初週売上(ORICON NEWSから)と、累計売上を千枚単位で取得(ソースはこちら)。コロナ前もある程度拾って推移を見たいので、2018年終盤発売のものから2022年3月現在のシングルを対象とする。また、48グループだけではなく販売特典のスキームも成り立ちも姉妹グループに近いといえる坂道シリーズ(乃木坂・欅坂・櫻坂・日向坂)、=LOVE、≠MEも含めて比較する。
今回は特に、累計売上枚数を重視。現在の個別トーク会/お話し会/おしゃべり会/ミーグリの販売は初週後も受付を継続しているため、累計売上で見たほうがヲタクの活動量をより反映していると言えるからだ。取得対象は、個別特典会の申込みが終了していると見受けられるシングルまでとする。
お願い:
手動で抜き出したため、数値のミスがあるかもしれません。もし発見されましたら、Twitterアカウント@110kinまでDMいただけますと幸いです。確認の上修正します。
集計一覧
こんな感じである。
といってもこれだけだとよくわからないのでもう少し噛み砕く。
推移
累計売上枚数にフォーカスして推移を折れ線グラフ化してみた。横軸が発売月、縦軸が累計売上枚数だ。
全グループ推移
もともとミリオンセラーだったAKBと乃木坂が一気に落ち込んで、市場全体の縮小が見える。コロナ禍の「AKB商法」の難しさが表れている。
ただし、AKBについてはコロナ禍のシングル(『根も葉もRumor』)からはそれまで個別握手会に参加していた姉妹グループが撤退した影響も大きいので、単純に70万枚減の理由をコロナ禍だけには求められない。
以下では、いくつかのグループに分解して推移の詳細を見ていきたい。
48グループの推移
AKB48グループに絞り、また上述の理由でコロナ前のAKBは全グループの影響もあったので、50万枚以下にフォーカスしてグラフを拡大。
- コロナ禍かつ姉妹グループが劇場盤イベントに参加しなかったAKBの『根も葉もRumor』は累計44.9枚。コロナ禍での姉妹グループとの対比を考えると、コロナ前でのAKB単独参加シングルは、60万~70万枚程度だったのではないか。また、AKBシングルに参加しなかった分のヲタク資金の向き先が姉妹グループに変わったかについてはこの数値だけでは推測が難しい。
- SKEはコロナ後の個別特典イベントは(ほぼ)リアルのみ。『FRUSTRATION』基準の6割程度の売上に落ち着く。コロナ後の松井珠理奈のラストシングル『恋落ちフラグ』から次作『あの頃の君を見つけた』は売上はほぼ変わらず。リアルイベントに絞っているため、参加できる社会状況でのプラス要因があったのでは。
- NMBは山本彩ラストシングル『僕だって泣いちゃうよ』からの下降傾向とコロナショックがダブルパンチ。メンバー卒業のペースも早く影響が大きい模様。このグラフ後の『恋と愛のその間には』では、全メンバー参加の投票企画を行ってテコ入れしていると思われる。
- HKTは指原莉乃ラストシングル『意志』からの約1割減でコロナ禍の『3-2』を販売。次の『君とどこかへ行きたい』ではリアルおしゃべり会を設けたが販売増にはつながっていない。
- NGTは2019年は騒動の影響もありシングルを出せなかったが、コロナ禍にユニバーサルに移籍してリリース。初週は低いものの、累計では大きく落ち込んでいるわけではない。オンラインおしゃべり会の日程増が効いていそうだ。
- STUは最後発にも関わらず、NMBやHKTと同水準。コロナでの落ち込みが少ないため、コロナ後ではSKEに近い水準に。販売枚数に応じてサイン会等が開放される「感謝枠」などでヲタクからの購入数を引き出す施策が成功していそうだ。加えて、コロナ後は劇場盤購入者が抽選参加できるリアルお話し会への参加会の施策もあり、直近2シングルはコロナ禍にも関わらず増加傾向にある。
坂道シリーズの推移
- 西野七瀬卒業シングルから緩やかな低下傾向にあった乃木坂は、コロナ禍での売上減が他グループに比べても大きい。人気メンバーの卒業が順次続いていたり、数万人動員していた全国握手会が開催できない影響も大きそうだ。
- 欅坂でのラストシングル『黒い羊』は累計ではほぼミリオン。コロナ禍で櫻坂として再出発した後は40~50万の推移となる。グループの変化とコロナ禍の影響のどちらが大きいかはここでは読み取りにくい。
- 日向坂はコロナ禍での減少率が1割程度。コロナがなければ70~80万枚程度も狙えるくらいの人気、ということが言えそうだ。
=LOVE/≠MEの推移
- ヲタク心をくすぐる指原莉乃プロデュースのイコノイ合計での人気はコロナ禍でもなんのその。
- コロナ禍でイコラブの売上が大きく下がっているように見えるのは、ノイミーのシングルデビューによって、ノイミーメンバーのイコラブ個別イベントへの参加がなくなった影響だと思われる。
(48に比べて坂道とイコノイに関しては字数がだいぶさっぱりになってしまいましたが、執筆時点で48寄りのヲタクなのでご容赦ください。考察・意見お待ちしております。異論大歓迎です)
売上数ゾーン①の推移
直近の累計売上数が40万枚以上の4グループをピックアップ。
水準を落とさない日向坂の売上枚数に、単独となったAKBと櫻坂が接近。少し上に乃木坂、といった状況。テレビの音楽特番に出演できるグループの現在のニーズに近いように思える。
売上数ゾーン②の推移
リアルイベントにこだわるSKEが大きく落としつつ姉妹グループ内トップをキープしつつSTUが肉薄。NMBはSKEとの競り合いからは少し距離ができた。HKT・NMB・NGT・イコラブが近いグループにいて、単独になったノイミーがこのグループに今後肉薄するかどうか。
まとめ
さて。冒頭での「ヲタク、生きてる…?」の疑問に対する答えだ。
少なくともCD特典イベントを通したヲタ活としては、全体として縮小傾向であることは言えそうだ。
ただし、人気の傾きが変わらない日向坂やイコノイ、劇場盤施策強化に積極的なSTUなど、推移がコロナ禍でも変わらないグループがある。リモート中心に形を変えても活発にヲタクが推しているグループということだ。
ここで取り上げたグループの中には、今後リアルでの対面会が全面的に復活するグループ/しないグループがあるだろう。坂道は復活させない可能性もそれなりに高いのではないかと勝手に思っている。その際にもどういう推移をたどっていくのか、少し時間を開けて見てみたい。
また、ここでは定量的に外部から観測できる数値としてCD売上をピックアップしてみたが、現場での肌感覚とはまた違うものでもある。コロナ禍はよりその乖離が進んでいるとも思う。引き続き現場での感想も綴っていきたいところだ。
再度のお願い:
手動で抜き出したため、数値のミスがあるかもしれません。もし発見されましたら、Twitterアカウント@110kinまでDMいただけますと幸いです。確認の上修正します。