やっぱりすごいなぁ、浦和。
2018.12.01
明治安田生命 J1リーグ 第34節
浦和レッズ vs FC東京
観戦シーズンとしては最適なはずの秋はアイドル現場優先で来ていたため、数カ月ぶりのスタジアム観戦。アイドルヲタクの友人が最近サッカーに興味を持ち始めたそうなので、せっかくだしとこの日の最終節に誘って観戦してみた。
初めてJリーグの観戦に連れて行くなら、やっぱり埼玉スタジアムの浦和戦がいいよね。これだけ観客が入って、かつ圧倒的なゴール裏の声量と熱量。これはおそらく、世界のサッカー大国にも誇っていい。イングランドやアルゼンチンに行ったことはないけど。
……なので、埼スタが僕のファーストチョイスになる。浦和レッズ自体はそんなに好きではないのだけれど、これは認めないといけない。
というわけで、10年ぶりくらいの埼スタでの浦和戦の観戦になった。埼玉高速鉄道を赤いユニフォームに囲まれるこの感覚、やっぱりゾクゾクする。
松村香織さんのご縁で最近は毎年行くようになった和光市で開催される「鍋グランプリ」が今日やっているようで、こちらを目当てに少し早めに埼スタへ。
和光市の鍋グランプリでの名物的になっている牛すじシチュー鍋を狙いに、一番並んでいる屋台へ突撃したものの、途中で鍋が枯れてしまい解散。秩父みそちゃんこをいただく。
濃いめの味噌がうまい。自由に調整できたはずの食べるラー油を自分でかけすぎた。
お腹を少し満たして、座席に着席。この日はビジター席隣のSA指定エリア。FC東京の応援エリアも近い席になる。知人にいい席で見てもらいたい&FC東京寄りの僕が「応援はしないまでも心理的にそちらに寄れる」席にさせてもらった(周囲の浦和ファンのみなさんすみません)。座りながらウォーミングアップを見ていると、昔来た頃より音楽や前録りの選手の声を使った演出が増えていることに気づく。「ピッチ最優先」の浦和とはいえ、その主義を崩さない祭りの演出はしっかりしていくということなのだろう。
普段はバックスタンドの上の方から観ることが多いのもあって、この日は選手の声も時折聴こえるような近い位置でバチバチなコンタクトを感じることに新鮮だった。それに加えて、普段俯瞰で距離を取っているときの見方もクロスで感じられて、ものすごい新鮮な感覚があった。1vs1でバチバチやっているのを感じながら、選手のポジショニングの狙いや全体への影響も察することができたような気がする。プレーからはもう長く離れたので、こういう感覚を持つことは難しいかなと思っていただけに新鮮な感覚だった。
オンザピッチの話もレポート的に書いてみますか。
FC東京はトップ下に高萩が入る4-2-3-1ではなく、ボランチに高萩を下げて永井とディエゴの2トップ。高萩を下げて、と書いてみたものの、攻撃的MFといっていいような振る舞いなので「守備的MF」感はあまりない。2トップがボールを持った時の強さがあるディエゴと絶対的なスピードを誇る永井で縦への推進力が強い布陣だ。この2人に絡んでいく両サイドハーフの東と大森、そして大外を走る太田と室屋へのパスを高萩やセンターバックから出る形。
ボールを奪ってスペースがあるなら永井が裏抜けしてそのまま。相手に引かれたなら一度センターバックに戻して、森重やチャン・ヒョンスから鋭い縦パスがディエゴに入って、そこから永井や東が裏に受けてフィニッシュまでつなげていく。
この日は夏にはここまで崩せていなかっただろう3人、4人でのパス交換からのフィニッシュの形がたくさんあった。ただ、最後のクロスやシュートの精度がどうしても上がらない。2得点したものの、それ以前に決めておくべきシュートが多すぎた。それだけ前のめりになっている反動で、今年の東京にしては珍しく守備の切り替え時の集中力の欠如で失点している。2点目のフリーキックのクイックリスタートもそうだし、ヘディングのこぼれ球のカバーをかっさらわれたのもそうだった。
決めておくべきときに決めて、決めたら集中力を高く保って身体を張ってボールを奪う。これが今年の東京の理想系なのだが、なかなかそうはいかない最終戦だった。
ホームの浦和は、スターティングメンバーを見て少しがっくり来た。チーム得点王の興梠がいないのだ。細かい一瞬の動き出しが売りの彼のプレーはスタジアムで見たほうが気づきが多い。久しぶりのプレーを見たかったのに残念だった。
興梠の不在に代表されるように、この日の浦和は水曜日の天皇杯を控えてターンオーバーをしていた。この日の東京戦に勝ったとしても5位でリーグ戦順位でのACL出場には届かないため、土⇒水⇒日と過密日程となる天皇杯に水準を合わせているわけだ。
とはいえ、浦和は浦和。
この日出場停止から空けた10番でキャプテンの柏木が左足で演出をするし、守ってもときには1トップ状態になって引ききるし、東京が攻めあぐねて後ろにボールを戻す際はそこから前にプレスをかけてそのままショートカウンターにするシーンもあった。ディエゴと槙野の勝負は見ごたえがあったし、この日初めて観た柴戸も攻守にエネルギッシュな選手だった。ただ、サイドの攻防は東京のサイドバック側に質的優位はあったよなぁと悔やんでみる。あとでDAZNで見返したらそうでもなかったのだけど。上で書いてたピッチの俯瞰もわかるって体感はなんだったんだ。
最後には今シーズンで引退する平川にサービスタイムを与えて試合終了。いろんな意味で浦和の「厚さ」を感じた90分だった。
ただ、「ACLもいいがそろそろリーグを獲ってくれ」というのがサポーターの本音らしい。
せっかくなので、試合終了後には少し残って平川の引退セレモニーを見ていくことにした。
大型ビジョンに映される動画、サイネージを流れる彼の名前、そしてゴール裏のメッセージとビッグユニフォームとコレオグラフィー(コレオは僕たちが退場後、平川がゴール裏に差し掛かった瞬間に発動したらしい)。
大卒後この日本を代表するクラブ一筋17年やることがとてもすごいことなのはわかるけれど、代表キャップはない選手。でも、このクラブが浦和レッズになって以降獲得したすべてのタイトルに貢献した選手。それがこんなに盛大に送り出されるなんて、やっぱり浦和レッズはすごいクラブだ。ちょっと悔しいけど。
「サッカー選手だと、こんなふうに卒業公演をやってくれる機会、そうそうないんですよ」
アイドルヲタクの知人にそう説明しながら浦和美園駅までの肌寒い道のりを歩いて帰った。
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